魔人ボブ・サップ
   プライドに参戦してきた魔人、ボブ・サップ。この男が魔人と言われる所以は、その男の身体にある。なんと身長が205センチで体重が170キロ。首周りが60センチ弱あり、さらには握力は測定不能。こんな怪物が日本の格闘技界を今騒がしている。

 そんな魔人が本日6月2日、日本の格闘技界のホープの中迫剛と対戦した。中迫の身長は190センチで、体重は100キロ弱。なんと体重差が70キロ!パンチの重さは10キロ違うだけでも相当違うといわれているだけに、70キロの差というのはケタ外れの差である。ボブ・サップの全体重が乗ったパンチを中迫がもし一発でももらったら、間違いなく失神級のノックダウンであることは間違いないであろう。

 ところが、この試合、ボブ・サップの反則負けで試合が終わってしまった。
 試合開始と同時にサップは巨体もろとも中迫に襲い掛かり、中迫が必死にガードしているのをものともせず、そのガードの上から鉛以上に重たいであろうパンチを何発も繰り出した。たまらず中迫のバランスがくずれて倒れそうになったところで、なんとサップは中迫の後頭部めがけて全体重を乗せた肘打ちをくらわしたのである!

 たまらず崩れ落ちる中迫に対してさらにサップは、アッパーブローをぶつけにいく。もう無茶苦茶である。K−1では肘打ちは禁止である。さらに既にダウン状態の選手に攻撃を仕掛けることは許されない。当然のことながら、レフェリーが止めに入ったが、何しろ超巨体の持ち主、ボブ・サップである。早々この魔人のラッシュを止めれる人間がいるはずがない。だが、サップもさすがに試合開始して間もないということに、自ら気付いたのであろうか。ひとまず、無茶苦茶な攻撃は小休止して、セコンドに帰っていったのである。

 怒涛のラッシュの被害にあった中迫の様子をレフェリーや、ドクター、セコンドが心配する。中迫はしばらく立ち上がれなかった。やはり後頭部への肘鉄が相当効いたようである。その間も、サップは「早く続きをやらせろ」と言わんばかりの飢えた獣の目をしてリングの墨から中迫を睨に続けていた。

 中迫がなんとか回復して、試合がやっと再開された。サップはまたしても開始と同時に、中迫にラッシュを仕掛ける。サップのパンチが一発入った瞬間に、中迫はひたすらガードするしかない状態に陥る。なんとか中迫がクリンチで逃げようとした瞬間に、クリンチなどさせるものかと言わんばかりに、なんとサップは中迫を投げ飛ばしてしまう。そして、サップは今度はアッパーではなくて、倒れる中迫に対して、なんと蹴りを連発しだしたのである。もう喧嘩である。

 リング上には、セコンドについていた大勢のK−1関係者が魔人と取り押さえようと流れ込む。だが、そんな魔人をちょっとやそっとの人数で押さえられるはずもない。10人近い人間がサップをやっとのことで押さえつけて、やっとのことでその場を静めることができた。だが、中迫の怒りも静まらない。中迫もルールの上で正等に戦いたかったことだろう。

しかしボブ・サップの度重なる反則ファイトで、試合は中止となってしまった。サップの反則負けである。中迫も不満だが、サップのほうがもっと不満気に映った。「なぜこれぐらいのことで反則負けなんだ??!!K−1など、やってられん!」そんなサップの声が聴こえてくるようだった。

 たしかに当然の結果である。K−1ルールでサップの戦い方が許されるべきではない。だが、この男、K−1よりもやはりプライドでもっと闘っていって欲しい。バーリトゥードで闘うほうがどう考えても、サップには合っているだろう。あのノゲイラと、このサップをぶつけて欲しいというのが今の筆者の一番の望みである。

 また、プライドではなくてUFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)のほうが、もっとサップには合っているだろう。限りなく路上ファイトに近いルールなしの世界でこそ、サップの本当の強さが計れると言えよう。

 そもそもサップのようなファイターが日本に参戦してくるというのは、そのファイトマネーの高さにあるのだろう。プライドや、K−1で有名になれば、相当の金を稼ぐことが出来る。日本に来て闘う一番の理由はそれだろう。そして、そうした考えを持つ世界中の猛者たちが今、日本にどんどんやってきている。格闘技ファンにはたまらない喜びである。日本の格闘技界は今世界で一番熱いのではないだろうか。



 ●ボブ・サップのプロフィールについて●

日本のマスコミは誇張してボブ・サップのことを伝えていると考えられる。まず身長だが、205センチはないだろう。なぜなら、190センチの中迫と対峙したときの身長差が明らかに15センチもなかったからである。この点はフィート表記からセンチ表記への変換における多少の誤差とでもいえるのか。

 また握力であるが測定不能というのは言いすぎだろう。「ちゃんと測定しろ」、この一言に尽きる。予想では100キロぐらいと踏んでいる。(といっても100キロというのは異常な数値である)

 サップの所属するのはモーリススミスKBC(キックボクシングクラブ)。元NFL選手だというこの巨体の魔人が格闘技に転向したのは、NFLにいたときにチームメイトを暴行して追放されたからだという。その過去も実に興味深いが、その巨体で100メートルを11秒台で走るという洒落にならない身体能力もさらに興味深い。

これからのサップのバーリトゥードに注目である。まぁ、K−1にもう一度参加して、ルールを守って闘っても本当に強いというところも見せて欲しい気もするが・・・。

 2002/06/02




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